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来し方行く末、あなたと共に! 第一話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点

第二話:一年前の今日、放課後の部室にて


第一話:現状・室戸の視点


 「お前らは、彼女ができた程度で二次元を捨てるのか!」


 それは心からの叫びだった。
 「だってよ、時間がねーんだもんよ。アニメ見る時間がよ。デートで忙しいじゃん、俺ら」
 「仕方ないって。アニメとかギャルゲーにうつつを抜かしてる暇なんかねぇよ。ラノベも読む時間なんてないし。それより、現実の女の子を優先しなきゃ」
 なにを、いってるんだ。現実のために、二次元を蔑ろにするのか。
 ふざけるなよ。
 憎悪と憤怒と悲哀が渾然一体となって脳内を満たし、体中の穴という穴からおぞましいドロドロしたものが噴き出そうだった。
 「お前ら……お前らなぁ……」
 どうして。俺たちは誓ったはずじゃないか。その下では必ず告白が成功するといわれる枯れない桜の木の下の笑みを絶やさない猫像の前で。現実なんてクソゲーだ、だから俺たちは二次元の女の子に心血を注ぐと。
 それなのに。お前らは現実の女が振り向いてくれたぐらいで、いとも簡単に二次元をポイするのか。
 「ほれ。むろっちゃんにやっからよ、これ」
 目の前に置かれたのは、大量の萌えグッズとそれらの上に二つ折りの白い便箋が一つ乗っけられたダンボールだ。目についたのは、『すかいふぉーる』と『イカ男の娘』の単行本だった。
 「これ、彼女に見られるわけにはいかんからね」
 「全部やるよ。ほら、むろっちゃん、これ欲しがってただろ? 『1/6スケールの邪神ナイアーラトテップ、メイド服ver.』さ。むろっちゃんにやるからよ、感謝しろよな」
 プッツン。
 前頭葉の後ろ辺りから、堪忍袋の緒が切れる音が聞こえた。
 「…………け」
 「あ? どしたん、むろっちゃん?」
 「聞こえなかった。もう一度いってくれ」
 「出て行け!!」
 大音声で、罵声を飛ばす。
 「お、おいおい。落ち着けって」
 「そうだ。俺らに彼女ができてうらやましいのはわかるが、なにもそこまで怒鳴らなくても」
 「お前ら何もわかっちゃいないんだな」
 許せない。激昂に駆られて、血が滲むほど拳を握りしめた。 
 「俺はお前らに彼女ができたことに怒りを覚えているんじゃない。そんなこと、うらやましくもなんともない。むしろ喜ばしいと思ってるぐらいだ。そうだろう? 友人に彼女ができたんだ。それを喜べないほど、俺は心のせまいヤツじゃない」
 けどな、と俺は言葉を紡ぐ。
 「許せないのは、お前らの二次元に対する態度の豹変ぶりだ。なんだ? お前らは、彼女ができる前までは『二次元がないと生きていけない』だの『セイバーは俺の嫁』だの『二次元だけが俺を理解してくれる』だのと、ぬかしてたではないか。常日頃からそんなことを平気で口に出していたくせに……見てみろ! この現状を! お前らはたかが現実の女ごときに告白されたぐらいで自分の持っていた考えや理念、信念ならびに信条までをもねじ曲げた! それも平然と、いとも簡単に、これが正常なんだと言わんばかりに! お前らには恥も外聞もないのか!」
 「だってよー。きっもちわりぃじゃん。ナニナニは俺の嫁とかっていうの。むしろ、それをいうほうが恥っていうか」
 「初めてできた自分の彼女に『その趣味やめてよ』なんていわれたんだ。しょうがないよ」
 「きもちわるい……しょうがない……だと……? ……プライドは……ないのかよ……?」
 「なんの自尊心よ、それ」
 「オタクのプライドなんて持ってるだけ無駄だ。そんなもん、持ってるだけ損だぞ」
 「違う! そうじゃない! オタクとかなんだとか関係ない!」
 「はいはいわかってますって。むろっちゃんは生粋のオタクだな、ホント」
 「俺らは脱オタ脱オタ、とっとと脱オタ」
 へらへらと、視線に侮蔑をのせてヤツらは嗤う。
 「俺はオタクじゃない……」
 「なにそれ? むろっちゃんはどっからどう見てもオタクだから」
 「いい加減さ、認めろよ。むろっちゃんはオタクだよ」
 「俺は自分自身をオタクだなんて自称しない、絶対にだ」
 「あれ? もしかして、自分がオタクだって認めたくないの?」
 「哀れなだな……だったら、オタクなんてやめちまえばいいのに」
 「俺はなりたくてなったんじゃない。気がついたらそうなってたんだ」
 「意味わかんねぇ」
 「もっと分かりやすく言ってくれ」
 「お前らみたいな二次元を足蹴にする自称オタクなんかにはならないっていってんだよ! わかんねぇのか!!」
 「なにそれ? じゃあ自分は自称しないから偉いと思ってんの?」
 「偉くねぇよ! むしろ他人からは疎まれるクソッタレだ! 人より劣るゴミクズだ! 何の取り柄もないロクデナシだ! でも俺はいつの間にかこうなった。どうやってこうなったかは自分でもわからない。だから止め方なんて知る由もないし、知りたくもない!」
 「いや、オタクなんてやめたほうがいいって。正直、今のむろっちゃん最高に気持ちわるい。あ、勘違いすんなよ。これはお前のためにいってるんだからな。罵ってるわけでは……」
 「気持ちわるい!? 上等だよ!! ああそうさ、俺は気持ちわるい!! お前らは俺がそのことに気づいてないと思ったか? いいや、違うね。はじめから気づいていたさ。二次元に欲情するなんて普通の人様から見れば気味の悪いことこの上ないだろうよ。でも、それが他人にとって不愉快であろうとも、俺にとってそれは最高の暇つぶしなんだ! 俺はこの不快に思われる道をいつの間にか選んでいた。それなら俺は喜んで嘲られよう。だけどお前らは、違かったのか? 幸せじゃなかったのか!? 癒やされなかったのか!? 蔑まれるのが嫌なだけで慈しんでいた二次元を破棄するのか!? お前らは、向こう側の女の子たちに慰められたあの日々を!! なかったことにしてしまうのか!?」
 熱い雫が、頬を伝う。なぜ流れ出るのかはわからない。昂ぶる胸中からこみ上げるように、ただただ涙は溢れくる。 
 「なかったことにしてはいけない。過去を否定してはいけない。だって……それは、恥ずべきことかもしれない。気持ちの悪いことでしかないのかもしれない。けれど! けれどそれは、俺たちが生きてきた確かな証拠なんだ! 自分が自分であるための証明なんだ! それを、簡単に捨てちまっていいのかよ……! いいわけないだろ!? なぁ、答えろよ!!」
 俺は思いの丈をぶつけた。それで目を覚ましてくれればいいと、そう願っていた。
 「うわ……ちょっと引くわ……」
 けれど。
 「そんなに俺ら、二次元に興味なんてないし。好きっちゃ好きだけど」
 俺の願いは届かない。
 「なっ……!」
 「まぁ、さ。彼女ができるまでは俺らもそう思ってたかもしんねーよ。けど、もう俺らには彼女いるし」
 「二次元なんて、彼女がいないヤツのダッチワイフみたいなものだろう? ホンモノの彼女ができたのに、ダッチワイフなんて必要か? 考えてみればわかるだろう。童貞にはわからないかもしんないが」
 「むろっちゃん、だから落ちつけよ。そしておめぇもとっとと彼女を作って、二次元なんかとおさらばしな。ガキみてぇにいつまでもアニメ見てはしゃいでんなって。俺ら、もう高校二年生なんだぜ?」
 そして、ヤツは俺の肩に手を置くと、
 「大人になれよ、むろっちゃん」
 ――――――――――。
 涙が。止まらない。
 こいつらは、こいつらだけは、わかってくれてると思っていたのに。
 「むろっちゃん、女の子の知り合いなんていねーべ? だからさ、俺の彼女の友だち紹介してやってもいいぞ。今どき彼女いないヤツなんて、人間以下だっつーの」
 「もちろん俺も協力してやるぞ。君の彼女を作る手助けなら、できる限りの範囲でなんでもしてやる。なんたって、俺らは友だちだもんな!」
 俺たちは。友達。友だち。ともだち。トモダチ。
 ト・モ・ダ・チ?
 ハッ。
 乾いた嗤いがこみ上げる。
 なんて。
 薄っぺらい言葉なんだろう。
 「……が…………」
 「あっ?」
 「えっ?」
 もはや赤の他人と化したこいつらを、怨念のこもった瞳で睨む。
 「恥を知れ……外道どもが……!」
 悪魔が乗り移ったのではないか、そう思えるほど口から邪悪な言葉が次々と漏れだした。
 「これが、これが二次元を愛していたヤツらの姿なのか。たかが現実の女ごときに……きさまらこそ、人間以下だ! 俺は、頭が悪くて、同級生たちにも教師にも好かれない。普通の人間と比べて俺は遥かに劣ってる。だが、二次元を愛する心を失わなかった。二次元だけが、俺を慰めてくれたからだ。お前らだってそうだったはずだろう。それなのに、二次元があったのに、お前らは現実を選んだ! お前らは二次元がありながら現実に! 今まで俺たちを虐げてきた現実に掌を返したんだぞ! これが! これが! 俺に初めてできた友だちの正体か!」
 口から椿がとぶ。かまわない。それより、ヤツらに憎しみをぶつけるのが先だ。
 「地獄へ落ちろ、俗物ども!」
 手近にあったモップをつかむと、それをあいつら目がけて振りまわす。
 「ちょ! やめろ、バカ!」
 「あ、危ないって!」
 「出て行け、この畜生ども!」
 「いってぇ! クソ、はなっからもうくるつもりはなかったよ!」
 あいつらは部室のドアを勢いよく開けると、そのまま廊下を駆けていった。
 走り去る背中にむかって、俺は大声を張り上げる。
 「お前らに、このアニメ研究部の敷居は二度と跨がせん! そして金輪際、俺の前に姿を表すな!」


 遠のいていく二人の背中を見つめているうちに、一年前のうだるように熱い夏の日のヴィジョンが脳裏に浮かぶ。




第二話:一年前の今日、放課後の部室にて
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