来し方行く末、あなたと共に! 第四話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点

第三話:そして時は現在に戻る
第五話:ループの始点


第四話:小学生と見紛うばかりの少女


 戸口を何かが軽く叩く音がした。
 「む、室戸さん? 失礼しても、よろしいですか?」
 この声は。隣の占い部のちーさんだ。
 「……」
 涙を拭う。俺は何も言わずに立ち上がり、スライド式のドアを開ける。
 そこには紫紺に染まったローブを羽織る少女が立っていた。高校生とは思われない、小学生と見紛うばかりの小さな体はひと目でちーさんだとわかる。身長と同じく体つきもずいぶん貧相だ。髪の毛はかなりのくせっ毛であるらしく、毛の先端部分はどれもこれも明後日の方向をむいている。ぼさぼさした髪の毛によって両目全体が覆われていて、ちーさんの素顔を見た者は恐らく誰もいない。
 「……どうぞ」
 ちーさんをアニ研部に招き入れる。部室は萌グッズでごった返しており、女の子のちーさんを部室に入れるのは少々恥ずかしかったが、彼女はそこらへんに理解ある人なのであまり気にしないようにしていた。
 ドアの近くにあるヤツらが座っていたパイプ椅子をちーさんに座るよう勧めると、俺は窓際にあるパイプ椅子に腰を下ろす。
 「室戸さん。あの、えと……さっき、どうしたんですか? 廊下で、怒鳴ってましたけど……」
 「なんでもないんだよ」
 「ホント、ですか?」
 ちーさんは指と指をこねこねしてうつむいている。何か揉めごとがあったのなら相談して欲しいという思いが、その小さな体と仕草からひしひしと伝わってきた。ちーさんは、どうやら優しいらしい。そんなちーさんに嘘をつくのは、なんだか失礼なような気がした。
 「……いや、何もなかったわけじゃないんだ。ただ、他の二人がこの部活をやめるってだけの話でさ」
 「お二人が……やめる?」
 「二次元になんて興味ありません、だってよ。まったく、つくづくわかんないもんだよな」
 窓の外を眺める。ヤツらの姿はとっくのとうに見えなくなっていた。
 「……少し、そちらに寄ってもいいですか?」
 俺は何も答えず、ただ黙って夕日を睨む。ちーさんは数秒待ったあと、沈黙を肯定として受け取ったようだ。パイプ椅子を引きずる音が後ろで騒がしい。そのうち、だんだんと近づいてきて、それは俺の真横で止まった。
 ……ちょっと、近すぎじゃないか? 別に、嫌なわけじゃないが、なんというか、女の子にここまで接近されたことはあまりないので、ちょっとドギマギしている。顔が熱くなったので、赤面してないかと心配になったが、夕焼けに紛れてわからないだろうと思うと少し安心した。
 沈黙が、またはじまった。
 ちーさんとは普段から話をする仲でもなんでもなく、部室が隣同士というだけでそれ以上の接点はほとんどない。唯一の接点といえば、同じ小学校に通っていたらしく、さらにはちーさんと同じ班になったこともあるらしいが、だからといって特に親しいわけでもない。ちーさんは前々から俺をよく知っているらしく、妙に馴れ馴れしいのだが、正直、共通の話題もないのでこの距離感が妙にわずらわしい。まぁ、嫌ではないのだが。
 そもそも女の子と事務的な会話以外でコミュニケイトした経験がほとんどないのだ。そんな俺が女の子とどう接していいかわからないのは当たり前ではないか。女の子が苦手というわけではない。むしろ大好きである。大好物である。女の子をおかずに白飯三杯ほど余裕でイケるぐらいには大好きではある。ただし二次元に限るが。とにかく最近は妄想の中でしか女人と会話していなかったのでまともに話せるわけがない。
 今も、この気まずい沈黙をどうにかするために何かを話さなければと思っているのだが、そう思えば思うほど思考はからまわる。脳内で編み出した話題が喉元を通りすぎようとするたびに、いやいやそれはあまりに下品すぎる、まてまてそれはあまりに卑猥ではないかと引っ込んで、それを何度もくり返す。次第に、話そうとするのがなんだか馬鹿らしくなったので、口をつぐんだままぼんやりと外を眺め続けることにした。




第五話:ループの始点
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