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来し方行く末、あなたと共に! 第七話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点

第六話:まだ誰もタイムリープに気づいていない
第八話:画面の向こう側の少女・まや姉の視点


第七話:二次元の姉キャラは視聴者の年齢を越しても
      姉キャラであり続ける、その悲しさについて


 どこから話そうか呻吟した結果、やはり最初から話したほうがわかりやすいという結論に至った。
 「えっと……俺がアニメやギャルゲーが大好きだってことは知ってるよね?」
 「は、はい。この部屋を見渡せばだいだい……」
 「ちなみに、ここにあるグッズやDVDのほとんどが俺の私物なんだ。ダンボールの中にあるやつも含めると……まぁ、全部だね」
 「ええっ! これ……全部ですか!?」
 ちーさんが驚くのも無理はないだろう。棚に積み上げられた数多のDVDボックス、ねんどろいどやキャストオフ使用の淫らな人形は山積みにされ、大量のマンガやライトノベルはそこらじゅうに平積みにされていた。
 これらを部活動の顧問が見たらぶったまげること間違いない。しかし、不埒な物品の持ち込みを検閲する顧問がこの部室に来訪するのはポケットの中のモンスターの色違いと遭遇する並に確率の低い事象なので、遠慮なくここに置かせてもらっている。もちろん許可はとってない。
 「そもそも、ここまで俺が二次元というものにどっぷりハマってしまったのは、父の書斎で見つけたとあるゲームが原因なんだ」
 「げーむですか」
 「タイトルは『True Heart2』。この作品は友人のいなかった俺にとって最高のひまつぶしだった。まぁ、小学校でギャルゲーやってるって知られただけで俺の周りから人波がますます遠ざかっていったが気にしてなどいない。断じてな」
 「わ、わかりますよ室戸さん! ちょっと違うかもしれませんが、小学校のころ占いに熱中してしまい、あまりの熱意にいつの間にか周囲の人たちからドン引きされていた女の子がいたって話を聞いたことがあります」
 「その話の女子って、ちーさんのこと?」
 「い、いいえ! ちがいますよ! 断じて!」
 「とにかく、俺はその『True Heart2』を溺愛している。とくに俺はその中のヒロイン、比良坂まやに惚れていた」
 「げーむにでてくるお姉さんに、ですか?」
 「うん。必ずしも現実の女性にを好きになれとはお地蔵様も言わなかっただろう。その頃の俺は、放課後に友人と呼ばれる類人猿と遊ぶよりまや姉のCGを回収することが幸せの秩序だったんだ。まや姉たまんねぇ! オープニングに合わせてまや姉が踊りだすさまは圧巻で、まるでコンピューター・グラフィックスなんだ、それが! 総天然色の青春ラブコメディやちょっと淫靡な隠しルートを俺が許せることくらい、オセアニアじゃあ常識なんだよ!」
 「室戸さん、『パプリカ』をご存知なのですか!?」
 「なにっ!? ちーさん、もしかしてその映画、見てたのかい」
 「は、はい……私、アニメ映画でいうと今敏と原恵一の作品が好きですので……」
 なにに照れているのかわからないが、ちーさんは体をもぞもぞさせて恥ずかしそうにそう告白した。それにしても意外だった。ちーさんがこの映画を見ているなんて。
 「そのことは横に置いといて、っと。話を元に戻すけど、俺はまや姉と出会ったその日から、二次元の世界にのめり込むようになった。そして、俺が見てきた数多くのヒロインたちの中でも、まや姉が姉キャラの中で最高のヒロインだと確信している」
 「よ、よかったですね?」
 「問題はここからだ。まや姉は、いやこれは二次元における姉キャラに共通する難題なんだけど、彼女たちはある致命的な弱点を抱えているんだ。Bパーツの左側の席の致死率が高いとか、左舷の弾幕が薄いとか、第三艦橋が沈みやすいように、ね」
 「弱点、ですか」
 「そう、それはね」
 ワンテンポ置いて、強調するようにその言葉を呟く。


 「それは、歳をとらないこと」


 「……ふつうに考えれば、利点ですよね」
 「利点でもあり、欠点でもあるんだ。姉キャラにおいてはね」
 「どういうことなんですか?」
 「説明しよう!」
 俺はホワイトボードに水性黒マジックペンで勢いよく主題を書き上げる。
 「妹きゃらが人気のひみつ、総合的に考えて姉きゃらはなぜ妹きゃらに負けるのか。年齢が矛盾をひきおこす……?」
 「姉を語るにはまず妹を語らねばなるまい」
 「妹さんが、どうしたんですか」
 「どうしたもこうしたもないんだよ! 今のラノベやギャルゲーやアニメを見てもらえればわかってもらえるだろうけど、それらのヒロインのほとんどが妹か主人公と同い年あるいは年下だったりするんだ! とくに妹! 昨今のアニメやラノベのタイトルには妹の文字を随所で散見するけれども、姉の一文字を探すのは徒労の極み! 姉キャラはとにかく不遇なんだ! 登場したとしても、大抵が妹を引き立てるための端役者だったりする! 姉キャラやお姉さん属性が好きな俺にとって、苦虫を噛み潰しながらこの事態を飲み込んでいるっていうのを理解してくれるかい!!?」
 「お、落ち着いてください! なんか怖いです!」
 「はっ……すまない。俺としたことが、ついつい熱くなりすぎてしまった。とにかく、まずはこれだけは頭に叩きこんでくれ。妹キャラは人気で、姉キャラは一般向けのアニメやラノベでは不人気だということを」
 「妹さんは人気、お姉さんは不人気」
 「でもその事態が仕方のないものだってのは俺もわかってるつもりなんだ。オタクといわれる変態紳士にはロリコンが多いから必然的に妹キャラの供給量も比例して多くなるっていうのも、妹と呼ばれる純粋無垢なイデアの象徴を崇め奉りたいという気持ちも。姉というのはエロ方面との相性は抜群なんだけど、どうも純潔のイメージからは若干遠いところに存在している。その点、妹キャラの優れているところは、純潔というイメージに近い場所にいながらも卑猥な妄想とも相性がいいからね」
 「……なんでお姉さんは、妹さんより、その、えっちぃのですか?」
 「例えるなら……姉キャラを年上のお姉さん、妹キャラを年下の妹と置き換えてくれ。どうだい、年上のお姉さんと年下の妹って言われたら、どっちのほうが性的なイメージが強い?」
 「どっちかっていわれたら……年上のお姉さんですね。妹さんよりも歳をとってるから、そういう知識も妹さんより知ってそうですし……」 
 「そのイメージは正しいよ。そしてね、男は自分と違うペニスを知っている女性を恐れおののいてしまうんだ」
 「ペ……!」
 「夜伽をしてもらうときに自分の息子を他人の息子と比べられて『小さいね!』なんて言われれば誰だって萎えるよ。……むしろ興奮するやつもいるのかな? とにかく、男にとってペニスをバカにされることほど恥ずかしくて悲しくてやりきれないことはない。なぜなら男根が怒張したときの大きさは、人によってその既定値が変わるんだけど、その既定値を変えることは無理に等しいからだ。だから、勃起した陽物のサイズが小さい男は短小に一生悩まされ続けることになる。とくに、俺のようにモテなくて童貞で自分の息子に自信がないのにプライドだけは人一倍でかいやつにとってはね。こいつだけはどうにもならないんだ。自尊心と性の関係についてさらに言及するなら、プライドの肥大化した自己中心的な俺にとって、人がもっとも恥ずべき部分を、つまりは息子を他人の前でさらけだすことは自傷行為にも等しい。けれど、妹に自尊心を傷つけられる危険はほぼないんだ。主人公より年下っていうことは、少なくとも主人公よりアダルトな知識はないだろうって思えるから、ナニが大きくてナニが小さいのか妹にわかるわけがないって思いこめる。だから妹キャラを誰もが好きになるんだろうね。もちろん例外もあるだろうし、この屁理屈自体が間違ってるような気もするけど」
 「そこまで、え、えええ、えっちぃのは、嫌いです!」
 「ごめんね、だけどこれは語るに欠かせないことだから。ここまでの話をまとめると、姉キャラは淫らな、それも生々しくて卑猥な印象が強く、我が息子を見下すのではないかという恐怖があるから不人気だけど、妹キャラはエロくても健全にみえるし、息子をありのまま愛してくれそうだから人気がでる。ここまで理解できたかな?」
 「な、なんとか」 
 「俺にとって姉キャラは先回りして主人公をリードしてくれるから、そして妹キャラなんかよりも包み込んでくれるような慈悲深い優しさがあるから、妹キャラよりは姉キャラの方が好きなんだけど……まぁ、その話は置いといて。最後に、姉キャラ最大の問題点をお話するよ。それはね、姉であるが故に引き起こるんだ」
 「お姉さんであるのが問題なんですか?」
 「そう。一から説明すると、妹キャラっていうのは主人公にとっての妹でありながら、プレイヤーや視聴者自身の妹でもある。姉キャラの場合もまた然り。で、妹キャラは主人公よりも年下だ」
 「それは……そうですよね」
 「妹キャラの強みの一つはそれだ。まずもって姉や妹は近親者として主人公と接触する時間がかなり多い。これは姉キャラと妹キャラに共通する優位性だけど、それに加えて妹は主人公より年下なんだからとんでもない」
 「そんなに、年齢って重要なんですかね?」
 「とてつもなく。理由は単純明快。プレイヤーや視聴者が妹キャラの年齢を越えてしまえば、その妹は永遠に美しくも変わらない姿のまま妹であり続ける」
 「……姉きゃらでも、同じような気がしますけど……」
 「『永遠に美しくも変わらない姿』っていうのはね。ただ、ある時点で二次元の姉は現実の俺たちにとっての姉ではなくなってしまうんだ」
 「わ、わかりません。なぜですか?」
 「それはね、二次元の女の子は歳をとらなくて、現実の俺たちは歳をとってしまうからだ」
 「というと……」
 「俺が九歳の小学三年生だったころ、まや姉は十六歳だった。そして、今の俺は十六歳の高校二年生で、まや姉は十六歳のままだ。そして偶然にも、まや姉と俺の誕生日は一緒なんだ」
 机の上に乗るダンボールへ近づく。中には大量の萌グッズと白い便箋。ヤツらが置いてった品物だ。
 二つに折られた白い便箋を手に取る。表面には、赤ペンで「ハッピーバースデー!」と殴り書きされていた。
 俺はその便箋を中身も見ずに引き裂いた。
 「俺は今日、まや姉の年齢を超える」
 便箋がただの紙屑になるまで、何度も何度もひきちぎる。
 「まや姉は俺の姉じゃなくなるんだ、こんなに悲しいことはない」
 心中で、俺は十七歳になってしまうんだなと呟きながら。
 「結論からいうと姉キャラっていうのは、その姉を好きになってしまったプレイヤーや視聴者を悲しませるんだよ。歳をとらないことによってね」
 俺はまや姉の顔を心に浮かべる。


 ああ――――――――――まや姉、俺のお姉さん。もしもあなたが幻想ではなく思考できる存在であるのならば、あなたは今、何を思っているのだろう?




第八話:画面の向こう側の少女・まや姉の視点
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