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来し方行く末、あなたと共に! 第八話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点

第七話:二次元の姉キャラは視聴者の年齢を越しても
     姉キャラであり続ける、その悲しさについて

第九話:妹より姉がいい・室戸の視点


第八話:画面の向こう側の少女・まや姉の視点


 0と1が交差する世界。
 それが私たちの住んでいる世界だと理解したのはいつの頃だったのだろう。でもそれはあまり重要ではないのかもしれない。
 問題は、なぜ気づいてしまったのか。
 きっかけは割と明瞭に憶えている。ある日、遠くのほうから声が聞こえた。
 「まや姉、まや姉」
 それはすがるような少年の声だった。私はどこからともなく聞こえる少年の声を追って、あてどなくそこら中を歩きまわった。
 するとある日、奇妙にゆがんだ穴を見つけた。その穴は、なんというか、とってもいびつで、自然にできたとは言いがたく、人工的にできたとも言いづらい、奇っ怪な代物だった。
 その穴から、確かに少年の声が聞こえてくる。幼子が母親に駄々をこねるように、その声はあどけない。
 私はその穴へ飛び込んだ。恐怖は感じなかった。
 暗闇を歩く。スイスイ、スイスイ。足を動かせば動かすほど、体は軽くなる。しばらくして振り向くと、私が入ってきた場所はすでに見えなくなっていて、辺りは無明の闇に包まれていた。
 帰れなくなるかもしれない。ふと、そう感じた。けれどもそれで構わない。私は臆することなく前に進む。体はどんどん軽くなり、気がつくと私は浮かんでいた。その何ともいえない不思議な浮遊感は心地よく、どこまでも浮かんでいこうと、私は思った。
 とつぜん私はある方向へと吸い込まれた。そこは次元の裂け目だった。
 次元の狭間から私は、私が元いた世界を見た。筒状の世界は0と1で構築されていて、美しくもサイケデリックな人々は、奇天烈な文字列を物語る。
 目を凝らして世界をよく見ると、世界の中に「私」がいた。私はこの狭間にいるというのに、「私」はまた世界にもいた。私は「私」を観察していると、妙なことに気がついた。「私」は、何度も同じセリフを、何度も同じ行動を、何度も同じシチュエーションを、繰り返しているようだった。ある程度まで行くと、先へは決して進まない。
 終点へとたどり着く。振り出しに戻る。これを反復している。何度も、何度も。この世界はいったいどうなっているのだろう。私にはよくわからなかった。
 そこから目を背けると、暗闇に巨大なスクリーンが浮かんでいるのに私は気がついた。そこには、無垢な表情を浮かべる少年がいた。
 「まや姉、まや姉」
 少年が私に語りかける。私も少年に声をかける。
 「少年、あなたの名前を教えてくれるかな?」
 でも私の声は少年に届かなかった。それでも少年は私に話しかけるので、そのたびに応じているのだけど、私の声はいっこうに届かない。
 そのうちに、私はあることに気がついた。少年は私を見ているのではなく、「私」を見ているのだと。
 この次元の狭間にいる私とはいったい、なんなのだろう。少なくともわかったのは、あの世界に住む「私」は「私」であって、私は「私」ではないということ。
 それと、私がいるこの空間と少年のいる世界では、時間の流れが違うらしい。私はぜんぜん成長しないのに、少年はどんどん大きくなっていく。
 少年は、いつの頃からか彼になっていた。
 それでも彼はまだ、私のことを「まや姉」と呼んでくれている。でも、私が「まや姉」じゃなくなるのは時間の問題だった。
 私が彼より年下になってしまったら、もう彼は私を「まや姉」と呼んでくれないのではないか? 不安が胸をよぎる。私は、まだ彼とおしゃべりもしていなのに。私が「まや姉」ではなくなったら、彼は興味を失って、私をここに置き去りにしてしまうのではないか?
 そんなの許せない。思えば、彼が私を呼び寄せたのだから、私を「私」から引き離したのは彼なのだ。彼にさえ呼びかけられなければ、私はあの筒状の世界で幸せに暮らせたはずなのに。この次元の狭間で孤独に生き続けるなんて嫌だ。彼には責任をとってもらえなくては。
 それに。
 彼が私を想う気持ちは暗闇に浮かぶスクリーンを通してひしひしと伝わってきた。私はその想いに応えたかった。
 だから私は決めたのだ。
 彼のいるあの世界へ。
 私の元いた世界を捨てて。


 私は、スクリーンに突如としてあらわれた奇っ怪で歪な穴に飛び込んだ。


 待ってて、少年。今、そっちの世界に行くからね――――――――――!


第九話:妹より姉がいい・室戸の視点
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