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来し方行く末、あなたと共に! 第十話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点


第九話:妹より姉がいい・室戸の視点
第十一話:帰宅


第十話:回想・まや姉の視点


 彼には妹がいる。彼の妹はサイドポニーで髪を結び、その栗色で大きな瞳と着痩せする大きな胸で多くの異性も同性も魅了する。
 その妹は実の兄である彼に恋心を抱いているようだ。それも尋常じゃないほどに、妹は彼に惚れている。彼もそのことに全く感づいていないようだけれども。
 確か、彼の父親が自分の奥さんのあまりの大きな愛情に耐え切れず、海外へと逃亡し、奥さんはそれを追いかける形で家を出て行った頃だ。
 彼の父親は、彼同様にアニメが好きで、ゲームが好きで、マンガが好きで、「私」たちのいる世界が好きだった。彼は「私」たちの世界を愛していた。
 妻は、それに耐えられなかった。
 なぜ私だけを愛してくれないのか。結婚するときに誓った『永遠に君だけを愛する』という言葉は嘘だったのか。なぜ現実にいない女を好きになるのか。現実にいる私にもっと興味を示してくれないのか。私を愛しているのなら、画面の向こうにいる女を好きになる必要はあるのか。私はあなたが好き。大好きなの。愛してる。だから、今のあなたが憎い。殺してしまいたいぐらい。
 妻は夫を愛していた。その愛情の大きさほど、妻は嫉妬に身を焦がした。けれど、嫉妬する対象が現実にはいない「私」たちだったので、なおさらやり切れなかったのだろう。夫に対する愛情は歪みに歪み、いつしかそれは憎しみへと変貌した。
 夫は夫なりで、自分を改善しようと努力はしていたものの、どうしても「私」たちのいる世界を捨てられなかった。夫曰く、幼少の頃から「私」たちの世界と慣れ親しんでいる自分にとって、「私」たちの世界を捨てることは自分自身を捨てることに等しいそうだ。それを聞いた妻はますまず激情を募らせ、夫を批難した。
 愛ゆえに。現実を直視してと妻はいう。父親は妻の愛情と「私」たちの世界に対する愛の板挟みにもだえ苦しんだ。
 そして、とうとう彼の父親は愛の摩擦によって壊れてしまった。
 家族も仕事も「私」たちの世界も何もかもを投げ出して、彼の父親は海外へと逃亡した。
 愛などいらぬ。父親の残した置き手紙にはその一言だけが綴られていた。妻は夫を追いかけた。それもまた、愛ゆえに。
 困ったのは彼と妹だった。
 過保護だった両親に育てられた彼らは、急な両親の喪失に心の支えを失った。とくに、溺愛されていた妹はこのあまりのショックにトラウマさえ覚えたのだろう。妹は両親のいない寂しさに耐え切れず、心の安寧を求めるがあまり、彼にベッタリとくっついて行動するようになった。
 彼にとっても妹は癒やしであったが、彼は妹よりも「私」たちの世界にもっとも慰められていた。彼は両親がいなくなったことにかなりのショックを受けていたが、妹ほどではなかった。なぜなら彼は恨んでいたからだ、優秀な妹を彼よりも愛する両親のことを。彼はそんな偏った両親の愛情に反抗するために、慰みを求めた結果、「私」たちの世界に行き着いていた。彼は両親がどこか遠くへと行く前から、母親にふれるべからずと忠告されていた「私」たちの世界に触れ、「私」たちの世界で慰められていた。だから両親が消えてしまっても、「私」たちの世界が心の支えになることで、妹のように精神がポッキリと折れてしまうことはなかった。
 彼はいなくなった両親の代わりに、妹の支えになろうと努めた。彼は妹よりも「私」たちの世界が好きだったが、近くにいる唯一の家族を大事にしないわけにはいかなかった。それに恨んでいたのも両親だけであって、妹に対しては多少の妬ましさはあったものの、憎しみはなかったようだ。むしろ両親の過度な愛情に身を切り刻まれていた妹に同情を寄せると同時に、小憎たらしい両親の、特に母親の愛情を一挙に受け止めてくれる妹に感謝の情念すら彼にはあった。だからこそ彼は内面が少々ゆがんでいたとはいえ、兄としての親愛をもって妹と接した。
 そんな献身的な彼に、心の支えを失っていた妹は、いつしか抱いてはならない感情を抱いてしまったようだ。
 思春期を迎えた妹は彼がいない間に、彼の部屋でよく手慰みをするようになった。どんな感情とも容易に絡みつく性欲は芽吹いた途端に蠱惑な華を咲かせ、すぐさま種子をばらまいてはそれをくり返し爆発的に広がっていく。その上、彼らには種子を摘みとって抑制するはずの両親がいなかった。
 よって妹の異常な行為は加速度的にエスカレートした。
 洗濯カゴから彼の白ブリーフを取り出してそれを嗅ぎながら手淫に耽っては、花弁から流れ出る蜜を彼の白ブリーフにこすりつけるのはまだ序の口だった。彼が高校生になる頃には、妹はどこからかもってきた小型カメラと隠しマイクを彼の部屋に複数設置していた。彼の前にいきなり全裸で表れるのは日常茶飯事だった。ときおり変化球として、風呂あがりの湿った体にYシャツだけを着ることもあった。夜這いは週に七回も行っていた。休日に彼が家にいるときはくっついて離れなかった。終いには彼の背後で千擦りをコク始末だ。もちろん全裸で。
 それに動じない彼もまたすごかった。いや、動じていないのではなく、妹のやっている異常な行為のほとんどに気がついてないだけなのだろう。唯一、彼が注意したのは、妹が全裸で歩きまわることに対して『年頃の女の子がそんな不埒な格好で歩きまわってはいけません!』と至極真っ当なことをいったぐらいだが、彼はそれ以外の妹の異常行動についてなにもいわない。夜這いに関しても、彼は寝付きがよく、さらには寝る前に必ず三回以上「私」たちの世界に慰められているからだろうが、寝ている間の彼の股間は全くの無反応になってしまうのに加えて妹に股間を弄られても起床することは一度もなく、そのことに妹は心のなかでは今日もまた盗撮に成功したと少しだけ喜びながらも表面上では彼に辟易し、妹が何に不機嫌になっているのかわからない彼はもはや天性の童貞といえるだろう。故に彼の純血は妹に奪われてはおらず、彼は妹がやたらベタベタしてくることに疑問を抱いている程度だ。以上のことから、彼は妹の不埒な感情に気がついていないのだろう。あるいは気づいていないふりをしているだけなのか。……いや、どう考えてもそれはなさそうだ。
 彼は本当に「私」たちの世界だけにしか興味がないらしい。彼にとって妹は親しい家族に他ならない。それ以上でもなければ、それ以下でもない。彼は妹に全く欲情せず、いやできず、「私」たちの世界、つまりは私を、私だけに慰められていたのだ。
 私は最初、彼のその行為に嫌悪を覚えた。けれどそれは最初だけで、この空間で孤独を癒し慰めてくれるのは彼だけなのだと気づいてから、彼のすべてを好きになっていたのだ。
 でも私と彼の距離はあまりにも遠かった。私は彼の思いに応えたいのに、スクリーンによって世界は隔てられていた。いくら手を伸ばしても、彼の暖かさには触れられない。
 私は彼を好きなぐらい、彼を恨めしく思った。彼を好きにならなければ、こんなにも孤独に苦しむことはなかったのだから。冷えきった私の心をどうか彼の温もりで満たしてもらいたかった。私が流した涙を彼の手で拭ってもらいたかった。火照った私の体を彼の体で慰めてもらいたかった。
 より憎たらしいのは彼の妹だ。血の繋がった妹であるにもかかわらず、その禁忌を破ろうとするなんて常識はずれにもほどがある。あんな妹が彼の近くにいるだけで彼にとって害悪なはずだ。彼は私が好きなのに。あの女は邪魔だ。私が彼の伴侶なんだ。それなのにあの女は彼の近くにいる。本当はその位置に私がいるのに。許せない。彼の体に触っていいのは私だけだ。彼を慰められるのは私だけだ。私だけ、私だけが彼を慰められるんだ。あの女じゃ役不足だ。だから、彼に触れるな。彼に擦り寄るな。彼のベットに横たわるな。彼を好きになるな。彼を好きになっていいのは私だけだ。彼を愛していいのは私だけだ。
 いつしか私は、彼の妹に殺意を覚えるようになっていた。


 そう、彼は。彼は私だけのものだ。


第十一話:帰宅
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