スポンサーサイト

EDIT

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

来し方行く末、あなたと共に! 第十一話

EDIT

この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点


第十話:回想・まや姉の視点
第十二話:病理・妹の視点


第十一話・帰宅


 帰宅すると、家は静寂で満たされていた。
 「ただいま」
 妹の返事はない。大きな声でもう一度「ただいま」といってみたものの、返答はまるでない。
 誰もいないのか?
 クソッタレ。「十九時時二十分までには帰って来てね! 待ってるから!」と妹がいうから、約束どおり十九時十九分に帰宅したというのに。ああ、腹が減った。ちくしょう、妹が帰ってきたらただじゃおかない。刻印蟲がうじゃうじゃ蠢いている湯船に三十分間ほど浸からせる並にきっついお仕置きをしてやらねば。
 二階へと上がり、自室に入るとカバンを適当に放り投げ、パソコンを立ち上げる。Windawsを起動中に、ほとんど使う機会のないガラパゴス携帯を開いた。はやく妹にお仕置きをしてやりたかったので、『油を売ってないで迅速に帰投せよ』と連絡するつもりだった。
 電話番号は二つしか知らない。妹、それに自分のものだけだ。元友人のヤツらの電話番号も記録していたが、それは帰宅途中で削除した。
 俺は携帯の電話帳のボタンを押すと、発信する相手を選ぶ画面へと表示が変わる。
 そこにあったのは、俺の名前と、『姉貴』の一文字だった。
 ……あぁ?
 変だ。俺が妹と姉を取り違えるはずがない。姉に及ばぬ妹ごときを『姉貴』と形容するわけがない。
 ははぁん。わかったぞ。これは妹が変えたんだ。いつやったのかは知らないが、妹は俺の性癖をなぜか熟知している。妹は自分を好きになってもらおうと、『妹』の表記を『姉貴』にしたんだ。そうすれば、バカでマヌケなこの俺は妹を姉と錯覚し、俺は妹に求婚するようになると妹は思ったのだろう。そこまで俺は阿呆ではないぞ。その発想はあまりにおかしい。妹よ、完全無欠なお前に与太郎っぽい部分があったなんて……少しだけかわいいところもあるじゃないか。ハーハッハッハ。んなわけないか。
 まず妹が俺に惚れているわけがない。才色兼備にしてモテモテのあいつが俺のような現実逃避ばかりしてる男を異性として見てるとは思えない。俺自身も、妹を女としては見れない。妹は大切な家族なんだから。それに、俺と妹は兄妹なんだ。ちゃんと血の繋がった兄妹。だから現実で妹が兄を好きになるなんてあり得るわけがない。まぁ、妹がやたらとベタベタしてくるのも妹なりのスキンシップなんだろう。ちーさんには思わせぶりなことをいってしまったが、ちーさんの反応がおもしろかったのでついつい口から大言壮語が飛び出した。とにかく、妹が俺を好きになるはずがない。好きになられる理由はどこにもない。……はずだ。
 だから、普段から「おにぃ、大好き」と妹が言ってくるのも、きっと気のせいだ。それは家族としてであって、決して異性としてではない。妹が俺と恋人になりたいなんて冗談ではない。妹は妹のままでいいのだ。妹は妹だからこそいいのだ。
 なぜ『妹』の文字が『姉貴』なっているのかは、いくら考えてもわからなかった。数分間だけ頭を捻ってみたものの、解決できない問題に興味をなくした俺は『姉貴』という誤表を『妹』に正し、妹へと電話をかける。
 しかし、なかなかどうしてつながらない。数コール後に「ただいま電話に出ることができません。ピーという発信音の後にお名前とご用件をお話ください」というお決まりの定型文が聞こえてきた。さらに二、三度ほど電話をかけ直してみたものの、一向にでる気配はない。
 妹め。どこをほっつき歩いてるんだ?
 「今日はおにぃの誕生日だからね。いろいろ用意して待ってるから、楽しみにしてて」なんていうから、あまり期待しないでいたものの……ここまで堂々とすっぽかされるとちょっとだけ落ち込む。妹がここまで性悪な女だったとは。やはり現実の女は信用できない。
 若干ブルーな気分を紛らわすために、マウスに手をかけると、すでに起動したパソコンのデスクトップ内にあるポインターを動かして、『True Heart2』のショートカットアイコンをダブルクリックする。こんなときはまや姉に慰められるのが一番だ。
 それに、まだ姉であるまや姉の姿をこの目に焼きつけておきたかった。
 『True Heart2』の起動に成功すると、デスクトップ上に表れたウインドウの白い背景に制作会社のロゴが浮かんでは消えて、バックグラウンド・ミュージックと共にまや姉がタイトルを読み上げる声が耳に届く――――――――――
 はずだった。
 スピーカーから流れ出たのはBGMと聞き憶えのない声だった。俺が待ち望んでいたまや姉の声は別の誰かの声とすり替わっていた。スタート画面ではタイトルロゴの下にまや姉の立ち絵を目にできるはずなのに、その姿はなく、別の女の子の立ち絵が目に写った。
 なんだこりゃ?
 今まではスタート画面にまや姉だけしか姿を表さなかった。それなのに、今回は別のキャラに変わっていた。
 いや、ギャルゲーやエロゲーをたくさんプレイしていれば、こんな現象を何回も網膜に焼きつけてきたはずだ。エンディングを迎えたり、特定のイベントをクリアすると、スタート画面でプレイヤーを向かい入れるキャラの立ち絵が変更されているなんてのはざらにある。
 問題は、今まさに目の前にいるこのキャラを、俺は見たことがないという点にある。
 まずもってこの女の子が『True Heart2』内で登場したという憶えがない。それに、エンディングや様々なイベントはとっくのとうに回収済みで、まや姉の立ち絵が変更される余地はないはずだ。脳内で、『True Heart2』のコミック版やノベル版、アンソロジーコミックにドラマCDの内容を思い返してみたものの、このキャラに該当するなんらかの記憶はない。
 『True Heart2』のウインドウを、デュアルディスプレイのサブディスプレイ内に移し、メインディスプレイにある『火狐』のショートカットアイコンをダブルクリック。すると、『火狐』のウインドウがメインディスプレイに開かれる。
 『火狐』とはウェブブラウザの一種であり、豊富なアドオンを駆使して自分なりに使いやすさを追求できるので、俺はこれを愛用していた。さっそく、この由々しき事態の真相を解き明かすために、俺は『火狐』からググール先生で検索を始めた。


 まや姉。あなたはどこに消えてしまったのだ?
 そして妹よ――――――――――お前はどこで何をしているのだ? はやく帰ってきて夕食を用意しておくれ。お兄ちゃんは腹ペコだ。


第十二話:病理・妹の視点
関連記事
web拍手 by FC2
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
この記事のトラックバックURL



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。