来し方行く末、あなたと共に! 第二十一話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点


第二十話:チャンス
第二十二話:興奮



第二十一話:現実と幻想の少女


 「ただいま……う~ん、疲れたぁ」
 まや姉は玄関へ辿り着くと、溜まっていた疲れを解きほぐすかのように背伸びをする。
 俺は携帯で時刻を確認する。時刻は十九時五十五分。あともう少しでタイムリープ発動時間へと到達する。
 帰り道、まや姉からは有力な情報は何一つ聞き出せなかった。まぁいい、時間はいくらでもある。あせらずにこのループから脱出する手立てを模索していくまでだ。
 「あーもうダメ。もう動けない」
 まや姉はそういうと、玄関の敷居に腰を据えて足を組んだまま、そのまま動こうとはしなかった。
 「私ね、今すっごく疲れちゃって、動けないの」
 「そうなのか」
 「うん、そうなの。指一本ですら動かせない。だから、あんたの手で私の靴を脱がせて」
 「いやだよ、自分で脱げよ」
 「……お仕置き、足りなかった?」
 「足りてますやります仰せのままに」
 なんだ? こんなイベント、ゲームの中では見られなかったぞ? それに、温厚なまや姉がこんな注文をしてくるとは驚きである。この傲慢さ、まさに俺の妹のようではないか。クソッタレ、まや姉になんらかのバグでも生じてるのか?
 まや姉の性格や行動がゲーム内と違う理由はわからない。とにかくタイムリープが発動する時間までは、おとなしくまや姉のゴキゲンでも伺っておくか。
 俺はその場にしゃがんで、まや姉の靴を足から取り外す。その途中、スカートの中を拝見できるかとも思ったが、まや姉は足を組んでいるために残念ながらパンツを拝むことはできなかった。しかし、スカートから丸見えになった太ももがやたらに扇情的でたまらない。パンツよりむしろこっちの方がエロいと思う。うむ、眼福々々。
 「……見てた?」
 「ナニモミテナイデス」
 「へー……そうなんだ」
 「疑り深いな。みてないといったら何もみてないんだ」
 「べつに、見てもいいんだよ?」
 小首をかしげるまや姉。
 「……破廉恥な」
 そうジロジロみてしまっては紳士の名が廃る。俺は立ち上がろうとした。
 そのとき。急にまや姉は俺の首に手を伸ばしたかと思うと、俺はまや姉に抱き寄せられた。
 「おぅ……!!?」
 あ、当たってる! ボインが、おっぱいが! それにすごく暖かくて柔らかいまや姉の体が服越しでもわかる。
 なんなんだ! いったいぜんたい、ナニがおこったというか!?
 「ねぇ……どうしたの?」
 まや姉が俺の耳元で囁く。微かな吐息が耳にあたり、背中がムズムズする。あまりにも、想像を絶するほどに、なめかましい。
 「ど、どうしたって?」
 お、落ち着け、落ち着くんだ俺。そうだ、素数を数えろ。素数、素数……あれ、素数ってなんだっけ……? ああ、頭の悪さが祟った! これでは素数を数えて落ち着くこともできない!
 「今日、様子が変だから……何か嫌なことでもあったの?」
 「ままままぁいろんなことがありましてですね、はい」
 「話して。スッキリするでしょ」
 「いや、いろんなことがありすぎて、一言で説明できないというか……」
 タイムリープから脱出するために尽力しているなんていえるわけがない。いったとしても信じてもらえないだろう。だからいわない。
 「ふーん、そっか……」
 ほほに暖かい感触。まや姉が自分のほっぺたを俺の頬にこすりつけている。
 「ま、まや姉……?」
 まや姉のほっぺ……いや、違う。こいつはもうちょっと、ほっぺたより強張っている。
 その何かが、くっついて離れる。最初は耳元でくっついては離れ、次は頬で。次は。唇と。くちびるが。
 「えっ……?」
 まや姉から、口づけをされたのか?
 「ジッとしてて……」
 そういうとまや姉は、口づけを繰り返した。何度も、何度も。ここに俺がいることを、確かめるかのように。
 まや姉は俺の上唇だけを口に含んで、味わうかのように舌でそれを舐める。下唇もまた同様にねぶられる。
 そしてゆっくりと、唇が重なりあうと、まや姉の舌がぬるりと入ってきた。
 「っ……!?」
 絡まる舌と舌。まや姉の椿。柑橘系を連想させるような匂いが口いっぱいに広がる。
 あまりの快感に、酔いしれそうになる。電流のような、なんともいい知れない快感が背筋を這う。そして、まや姉の太ももが俺の股間に押し付けられているのに今さらながら気がついた。
 そこを刺激するのは……ルール違反だ!
 「んっ……んぅ、っぷは! お、落ち着け! まや姉!」
 まや姉の顔を、どうにかして押しのける。
 「なに……?」
 まや姉はずいぶん不満そうな顔をしている。
 「待て、待ってくれ」
 いけない。このままじゃ俺の貞操の危機だ。
 「お、俺の口、クサイだろ? だから、俺が歯磨きをするまで、待ってくれないか?」
 「なんで? 私、気にしないよ?」
 「俺が気になるんだよ!」
 「……イヤ、なの?」
 「い、いや、そういうわけじゃ」
 あれ? そういえばおかしい。俺はまや姉と、『繋がれたい』と望んでいたのではなかったのか? ここでまや姉を拒む理由がどこにある? このまま行けば、夢にまで見た、まや姉で純潔を捨て去ることも実現できたのではないか? それなのに、なぜ?
 どうして、恋い焦がれてたはずの女の子を、拒否する必要がある?
 「………………」
 「……本当に、大丈夫?」
 「……まや姉、とにかく今はダメなんだ。それに姉弟でこんなことやるなんて、おかしいとは思わないか?」
 「姉弟でって……いっつもやってるでしょ?」
 ……なんということだ。
 この世界の「俺」は、ゲームでの設定とは違い、まや姉とは血の繋がった姉弟でありながらその禁忌を破ってしまっている『設定』なのか。
 いや、それはいい。問題はなぜまや姉を拒んでしまったのだろうか。
 ……妹だ。
 俺に執着するこの態度、言葉の端々、まや姉の一挙手一投足、そこに妹の『影』が視える。俺がまや姉に接するときの態度も妹に接するときのそれに等しい。
 今まで妹は二次元に取り込まれてきた、まや姉とすげ替えられたと仮定してきたが、もしかしたらこの現実自体が、二次元の中に取り込まれているのかもしれない。
 「なぁ、まや姉。俺たちの両親は海外にいるのか?」
 「やめて」
 ――――――――――殺気。
 「あんなクズな人間を親だなんて呼ばないでって、何度も言ったよね?」
 「……すまない」
 ふむ……。ゲーム内でのまや姉の両親は、まや姉を捨てて海外に行くなんて設定はなかった。どうやら、この世界のまや姉はゲーム内での設定と妹の人間関係が綯い交ぜになっているらしい。
 それに、この反応。妹の前で両親の話をしたときの反応と瓜二つだ。
 ここで俺はある一つの推測に達する。
 「なぁ、お前……妹、なんじゃないのか」
 「何それ? 意味分かんないだけど」
 本人は否定しているが、その可能性が濃厚だろう。この妹らしきまや姉と交わるわけにはいかない。
 廊下に立て掛けられた時計に目を移す。十九時五十七分。
 「まや姉、そろそろお別れの時間だ。だから最後に一つだけ質問させてくれ。まや姉は俺が二次元を愛してるのは知ってるか?」
 「お別れ? なんのこと?」
 「そこはどうでもいい。俺が二次元を愛しているかどうか知っているかと聞いてるんだ」
 「知ってるわ。だから今日、あんたが持ってるゲームとかフィギュアとか、ぜんぶ燃やすつもりだったの」
 平然と。それが当然だと言わんばかりに。まや姉は生気のない目で微笑みながらそう言ってのけた。その微笑みは、俺が二次元を慈しんでいるときに、妹が俺に向ける笑顔にソックリだった。


 時計の針が十九時五十八分を刻む。


第二十二話:興奮
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