来し方行く末、あなたと共に! 第二十二話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点


第二十一話:現実と幻想の少女
第二十三話:映画が好き


第二十二話:興奮


 「やぁ、また会ったね」
 「ぐぅ……!」
 目まぐるしい譫妄の世界を駆け巡ったかと思えば、俺はいつの間にかお茶会の席に座っていた。
 発狂してしまいそうになるのを、必死になって抑えこむ。狂うのは、まだ早い。
 「よく耐えられるものだね。邪神たちの世界を二回もみて正常でいられる人間はまずいない。ますます君に興味がわくよ」
 「質問が……! 質問があります……!」
 「いいだろう。時間が許す限りね」
 「妹は、どうやったら戻ってきますか……?」
 「比良坂まやの精神を二次元に返してループを脱出すれば、妹の精神を君に返してあげよう。ただし、君が望むのなら、比良坂まやを姉にしたままでタイムリープから脱出することも可能だ」
 「タイムリープは、なぜ発生したのですか……?」
 「君はあのまや姉という幻想の中の少女を欲しただろう? だから私は現実と幻想の境界線を取っ払ったんだ」
 「そんなことが……」
 「できるね。僕にしてみればいとも容易い。けれど、境界線が曖昧になった世界は不安定になってしまった。だから、世界は安定を求めるが故に停滞を始めた」
 「停滞……?」
 「そう、それがタイムリープだ。君がもし、ループから脱出したいと願うのなら、世界を安定させる他ない」
 世界を不安定にさせる不確実な要素――――――――――それは。
 「まや姉は、妹なんですか……?」
 「そうだね。正確に言えば、妹君の体に比良坂まやの精神が取り付いたんだ」
 「それだと、妹の体つきが変わっている説明がつきません……」
 「どうかな? 体とは精神の入れ物だ。だから、精神の骨格によって肉体も形を変えるのは当り前じゃないかな。僕のようにね。ただ、完全に精神が入れ替わってるというわけではない。妹君の残留思念的なものが比良坂まやの精神に影響を及ぼしているのに君も気づいているんじゃないかい?」
 まや姉の口調や正確にひずみが発生してるのも、そのためか。
 「……あなたがちーさんに呼び出されたのは、今回が初めてですよね……?」
 「違うね。今回で二度目だよ。一回目は君が引きこもりはじめたとき、僕は君と僕を呼び寄せたあの少女と幻想の中の彼女を見つけた。それからだね、僕が君たちに興味を抱いたのは」
 「このループから脱出する方法は、何でしょうか……?」
 「それは君自身が探り出さなければいけない。おっと、もうこんな時間だ。それではこの、永劫に続く小さな時間旅行を楽しんできたまえ」


 そして俺はどこまでも堕ちるのではないかと錯覚するほどの浮遊感に苛まれる。

     ◇

 「む、室戸さん! 大丈夫ですか!?」
 「あ……ちーさん、だい、じょう」
 ぶ、ではない。
 あまりの気持ちの悪さに、立っていられない。うずくまる。結局もまた、床に吐瀉物をぶちまけてしまった。胃にあるもの全てを吐き出しても、胃酸の逆流が止まらない。あまりの不快感に、涙が数滴、流れでた。発汗が止まらない。寒気もする。
 「遠慮せず、ぜんぶ床に吐き出してしまってください」
 ちーさんはすぐに俺の傍らへと寄り添うと、背中を優しくさすってくれた。
 「あ、りがと、ちー……さん……っぅ!」
 嘔吐する。それをくり返す。激臭が鼻をつんざく。この臭いを、ちーさんにも嗅がせてしまっているのか。ちーさんに申し訳ないという気持ちが込みあがる。だけど、ちーさんのぬくもりがなかったら、俺はたぶん吐瀉物の海を泳いでいただろう。気が狂ってしまっただろう。冷えきった心を温めてくれるちーさんに、感涙を流さずにはいられなかった。
 そして俺はまた、股間の一物を痛いほど勃起させていた。


第二十三話:映画が好き
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