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来し方行く末、あなたと共に! 第二十三話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点


第二十二話:興奮
第二十四話:フラッシュバック


第二十三話:映画が好き


 「ホントに、大丈夫ですか?」
 「うん。ありがとう、ちーさん」
 「じゃ、じゃあ、部室を片付けなきゃ……」
 「いいんだ、ちーさん。吐瀉物は放置しておいてかまわない」
 俺はちーさんと共に部室をでる。退室する際に、『ハッピーバースデー!』と殴り書きされた二つ折りにされた白い便箋を手にとった。
 折られた便箋を開く。中には、『屋上で待ってます。姉より』の小さな文字。
 ……屋上へ行ってみるか。
 「ちーさん、頼みがある」
 「はい、何でしょうか?」
 「近場のコンビニへ行って、ガムを買ってきてほしい」
 「ど、どうしてですか?」
 「口臭がどうにも気になってね。それに、俺は今から屋上に行かなければならないんだ。もちろんお礼はたんまりするよ」
 「お礼、ですか?」
 「もしもちーさんがコンビニでガムを買ってきてくれたら、『パシフィック・リム』のチケットと『ピラニア3D』のチケットをそれぞれ一枚づつ、プレゼントしよう」
 「ほ、ホントですか!?」
 「無論だ。男に二言はない」
 「う、嬉しいです! すごく見たかったんです! よくわかりましたね!」
 「ハーッハッハッハ。俺には人の心を読む才能があるんだよ」
 まぁ、人の心が読めるのではなくて、本当は前回のループでちーさんから聞いたことなのだが。
 「ホントですか?」
 「もちろんだとも」
 「じゃあ、私の好きな映画を何か一つ言ってみてください」
 「えっ……と、確か『ブルーバレンタイン』だっけ」
 「おー! すごいですね、よくわかりましたね!」
 「これぐらい当然だよ」
 「そうなんですよ、好きなんです! 『ドライブ』に出演してたライアン・ゴズリングと、みんな大好きボーイズ・ラブ『ブロークバックマウンテン』に出てきたミシェル・ウィリアムズが、夫婦役で登場するんですがね、いい倦怠期感を醸しだしてくれるんですよ。そしていいお話なんです!」
 「そ、そうなの?」
 「一言でこの作品の粗筋を表現するなら、『結婚したからって幸せになれると思うなよ、ドーン!』的な、非婚を啓蒙してくれる映画なんですね!」
 「……ほう。興味深いね」
 「いい方を変えると、『必ず最後に愛が勝つ』とかって思い上がってる頭のホワホワした連中に、『そんなの嘘っぱちだ!』って現実を突きつける映画なんですよ」
 「リア充爆発しろってな内容か、最高だね」
 「若いころの二人のシーンを見てると、なんだか二人ともそれぞれ相手に幻想を抱いていて、さらに結婚に対しても幸福なイメージを抱いてるものですから、その二人が年老いることによって幻想やイメージが壊れてしまい、どうしようもない空気が漂っているんですけど、その空気が、なんというか、他人の不幸ってこんなにもおいしいんですね!」
 「ちーさんって、けっこう腹黒いよね」
 「ありがとうございます」
 「褒めてない、褒めてない」
 「で、これ見て思ったのが、他人に幻想を抱いていない人なんて、たぶん存在しないんだろうなって思ったんです」
 「ははぁ……。まぁ、そうだろうね。自分が抱く他人のイメージっていうのは、あると思うよ」
 俺がちーさんに純粋無垢だというイメージを押し付けてるように、ね。
 「ここが大事なんですけど、『恋愛の幻想を抱いて傷つけあってしまうのなら、幻想なんか捨ててやる! 私はもう恋なんてしない!』っていうのではなくて、『恋愛の幻想と恋愛の実情のズレをうまく調節して男女関係をよりよいものにしていくんだ。それができないのなら、恋愛の実情をありのまま受け入れて恋人同士ボロボロになって傷つけ合うか、恋愛の幻想を守るために現実から逃げ出せ』っていいたかったのかな、と思いました」
 「まぁ、つまるところ結婚ってのは、確かに始めは幸せなんだろうけど、そんなものは一過性のものに過ぎず、ゆく歳月を知れば知るほど塗り固められた幻想は薄れ、どうしようもない不幸せな現実を直視せざるを得ない状況に陥るものになるっていいたいのかな?」
 「その通りです。それでこの映画は夫婦関係がメインテーマなので、男女が愛しあう幻想の姿と現実の姿のズレを考えさせてくれる映画になっているんですね」
 「非婚万歳!」
 「結婚をここまで悲観的な視線から見れるっていうのはある意味で幸せだと思うんです。いろいろなことを考えさせられますからね。そしてホワホワしたカップルはこの映画を見て気まずい雰囲気になりやがれです」
 「あっ、今気がついた! 生涯名誉童貞の俺には関係ないじゃない話じゃないか! 結婚なんてできるわけない!」
 「ちょ、ちょっと待って下さい! それは今後どうなるかわからないじゃないですか!」
 「いいや、できないね。そもそも女の子と付き合うってこと自体、絶望的なんだ。だったら俺は二次元の女の子と結婚する!」
 「二次元の女の子と結婚するにしても、円満な夫婦生活を歩むためには幻想と現実の差を縮めないといけないんですよ!」
 「あれ? でもそれが正しいのなら、そもそも二次元の女の子は現実にいないんだから、差なんて縮められないじゃない?」
 「……というより、二次元の女の子とは結婚できないのではないですか?」
 「………………泣いていい?」
 「うーん、ダメです」
 「クソッタレ! なんと言われようとも俺は二次元の女の子を愛するんだ!」
 「た、たまには現実の女の子に興味を向けてはいかがですか?」
 「無理だね。真面目な話、例え俺が興味を向けたとしても、誰かが振り返ってくれるとは思えない。じゃあ、身なりを整えて清潔にして『努力をしろ』っていわれるかもしれないけど、それこそ嗤っちゃうよ。鏡を見てみればわかる。もうどうしようもないんだなって」
 「か、顔が問題ではないと思いますけど……」
 「いいや、恋愛なんて美男美女が嗜むものだ。不器量な俺には似合わない」
 「そ、それはただ単に室戸さんが彼女を作るための努力をしない理由付けではないですか?」
 「どう捉えてもらってもかまわないよ。とにかく俺にとってその努力は報われないに決まってる」
 「で、でも、努力する過程が大事だって、いう人もいますよ」
 「嘘だドンドコドーン!」
 「ええっ!?」
 「そんなの嘘っぱちに決まってる。確かに、結果さえ出れば努力をする過程が大事だったってことになるだろうね。でも結果がでなければ、その過程に費やした時間はすべて無駄になる。もしも結果がでなかったら、他人からは『それはお前の努力が足りないんだ』っていわれて終わりだよ。例え何百時間も努力に時間を費やしたとしても、結果がでなければそういわれてしまうんだ。わかりやすい例をあげよう。ここにある一人のセールスマンがいるとしてね。彼は営業利益を上げるために、商品の魅力を突き詰めて、発声をよくするためにボイストレーニングもして、鏡の前では笑顔の練習をかかさず、他のセールスマンの三倍は歩いている。それでも、商品を他のセールスマンより売ることができなかったとしよう。彼はどうなると思う? 彼は、人一倍の努力をしているのに結果がでない。そんな人間はどうなるか? 答えは簡単。会社を退社するかクビになる。そして人からバカにされてると思い込んで自暴自棄となり酒をかっくらって性犯罪を犯して刑務所にぶちこまれるのがオチだね」
 「そんな……それでは、『努力』って、いったい何なんですか?」
 「バカに与えた夢だよ」
 「夢、ですか?」
 「努力は結果が出てはじめて認められる。努力は結果についてまわる付属品なんだ。結果の出ない努力なんてただのゴミ。そんなものは努力として認められない。それなのに、結果の出る見込みが無いとわかっていながら『努力をしろ』なんて、時間の浪費に苦しめっていわれてるようなもんさ。だけど俺は他人に対して『努力なんてアホらしいからやめればいいのに』なんて思わない。むしろ敬意の念すら払うね。だって努力する人たちは、『報われないかもしれない未来に命をかけてる』んだからね。でも俺はそんなに素晴らしい人間じゃない。肥溜めにうずくまってるような人間さ。どうしても、結果がでるかどうかもわからない『努力』という博打に時間を賭けるのに恐れおののいてしまう。だから現実の女の子を振り向かせる努力なんてしない。どんな努力だって、してやるもんか。それより俺はアニメを見ていたいんだ」
 「でも、もしかしたら……」
 「可能性はあるかもしれないよ。ただ俺は、もう全部ダメだったんだ。勉強も友情も恋心も、何もかもダメだったんだ。すべてうまく行かなかったんだ。これから何かがうまく行くと思うかい? 俺は思わないね」
 「むぅー……現実を悲観的に見る室戸さん、ちょっと嫌いです」
 「なんとでもいうがいいさ。俺には二次元さえあればそれでいい」
 「そんな室戸さんには、『タクシードライバー』という映画をオススメします」
 「あっ、それ見たことあるよ」
 「ウソ!? ホントですか!」
 「ロバート・デ・ニーロが出てる映画でしょ?」
 「そうなんですよ! 『キング・オブ・コメディ』や『ディパーテッド』のマーティン・スコセッシ監督を一躍有名にしたニューシネマ時代の怪作なんですけど、脚本家のポール・シュレイダーはよくあんなものを書き上げましたよね!」
 「すごいよね。イチャイチャしてるカップルがタクシーの中でおっぱじめる男女を見て、主人公のトラヴィスが『なんて淫猥なんだ! けしからん!』って感じるんだけど、トラヴィスの自宅にはエロ本が溢れかえってるし、暇をつぶす場所がポルノ映画館で、実は自分もそういういやらしいことがしたい、人肌が恋しいって思ってるんだけど、コミュニケーションが苦手で話せる女の人がいないどころか、友人すらいないから、他人に対する羨ましさが憎しみとなって噴出するっていうのを、映画で見せちゃうんだからね。無理に女の人と話そうものなら自分の学歴の低さを嗤われるってところも素晴らしかった。これを見て女の子とは無理に話そうとはしなくなったね」
 「も、もしかして室戸さんの現実の女の子に対する絶望って、そこから来てるんですか?」
 「ここからだけじゃないけど、そうでもあるね。とにかく、この映画を見たとき普段の自分の浅ましさを客観的に眺めているような気がして吐き気を催したよ」
 「奇遇ですね」
 「ちーさんもなの?」
 「あったりまえですよ! こちらとら、男女が手をつないで歩いてるのを見るだけで『げんこつをケツにねじ込んでやりましょうか?』って思いますから!」
 「嫉妬がダダ漏れじゃないか。俺もそうだけど」
 「室戸さんもですか?」
 「あたぼうよ。こっちだって、伊達に産まれながらの童貞やってないっての」
 「さすがです。室戸さんは、さながら現代版トラヴィスといったところでしょうか?」
 「そうかもね。ただ俺とトラヴィスの違うところは、彼には二次元がなくて、俺には二次元があるっていうことかな。彼の欲望のはけ口は44マグナムの鉄鉛に乗って現実に飛び出したけど、俺の欲望は股間の44マグナムから二次元に向けて発射されるからね」
 「室戸さんの……その、む、息子さんは、44マグナム並なんですか? 『ダーティ・ハリー』ですね、パンクですねぇ……」
 「……ごめん、そんなにでかくない。PPKがいいところ」
 「ジェームズ・ボンドじゃないですか! 女ったらしですね! サイレンサーはついてますか?」
 「ついてません! 銃身はもっと短いです! あ、でも、『サイレンサーついてる=被ってる』っていう意味なら、ついてるね、うん」
 「いいじゃないですか。PPKは小さくて扱いやすいらしいですよ、可愛らしいですし」
 「……それ以上、俺の股間のPPKをなじるのはやめてくれ……泣いちゃうよ?」
 「えっ? あ、いや! そういうつもりでは……!」
 「いいんだ、いいんだ。どうせ俺の息子は小さいんだ……」
 「そ、そんなことはありませんよ! 頑張れば、せめてグロック19レベルにまで到達するはずです!」
 「頑張ってPPKなんだよ!」
 「えええ!? あ、いえ、その、ご、ごめんなさい! あ、そうだ! 私、ガム買ってきますね! それではまた!」
 ちーさんはそういうと、ピューと駆け出して、すぐに姿が見えなくなってしまった。
 ……意外と足が早いな。しかも十傑集のような走り方をしている。いいセンスだ。
 おっと。そんなことはどうでもいい。今は屋上に向かわなければ。


第二十四話:フラッシュバック
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