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来し方行く末、あなたと共に! 第二十五話

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この物語は、主人公・室戸(むろと)がループを脱出するために、
アニメやマンガの知識を駆使して脱出しようと試みる物語。
暇つぶしに読んでいただけたらこれ幸い。


プロローグ:はじまりは夕暮れと共に・ちーさんの視点


第二十四話:フラッシュバック
第二十六話:クソッタレ


第二十五話:走馬灯


 それは小学生のころ。
 偏食だった俺は給食が大っ嫌いだった。担任の方針で、『食べ物は粗末にしてはいけないから、残さず食べるように』というルールがあった。その担任は知らないのだろう、自分にとって食べられないものを口に含むという行為は、ゴキブリを口に含んでしゃぶるに等しい行為なのだと。俺はそのルールのおかげで食べるという行為それ自体が嫌いになりかけた。食物に感謝することもなくなった。なにが『世界中には食べたくても食べられない子どもたちがいる』だ。その子どもたちだって、口にゴキブリでも突っ込まれたら卒倒するに決まってる。ゴキブリをドロップだと思って美味しそうにしゃぶるやつはまずいない。
 給食は均等に配られた。嫌いな食べ物があってもそれを受けとるように指示されていた。『好き嫌いをなくすため』だとか。俺は口に「ゴキブリ」なんぞ含みたくもなかったので、苦手なものがあったら担任の目を盗んで給食袋の中に「ゴキブリ」を捨てた。
 でもその日は、なぜか俺は口に「ゴキブリ」を含んでしまった。担任の監視の目が厳しかったからかもしれない。その結果、もれなく俺は吐瀉物で隣の女子を万遍なくゲロまみれにしてしまった。なぜこんなことになってしまったのか記憶が定かではないが、とにかくこんなことになってしまった。
 その後、俺はクラスから爪弾きにあった。俺の隣にいた女子はクラス内ヒエラルキーの中でも上位の地位をせしめていたからだ。それに、俺が勉強もよくわからなかったというのもある。三年生になっても、かけ算もわり算もろくにできやしない。暗記なんかは大の苦手で、漢字なんてろくに憶えられやしなかった。国語の文章問題も、「他人の心情なんてわかるわけがない。大人の先生が嫌いな食べ物を口に含む子どもの心情も理解できないのだから、ましてや子どもの僕に何がわかるというのか」といった具合だった。もちろんそんなことを解答欄に書いたら、担任に因縁をつけられてしまい、俺がイジメられていても担任は涼しい顔をして目の前を通りすぎて行くのだった。クラスに居場所のなくなった俺は、学校から逃げ出した。俺はいっしょに居たくもない連中と無理矢理いっしょにさせられる、あの妙な閉塞感を患った教室の空気に反吐が出た。
 そこから俺は中学生になるまで引きこもった。母は『引きこもっていてはあなたのためにならない。はやく出てきて、学校に行きましょう』と毎朝ドアを叩いてくる。死にたい、と思った。父親は俺が引きこもっていることに関して何もいわなかった。
 昼間は誰もいなくなる。両親も、妹も。閑散とした我が家の片隅で、俺は一国一城の主になった気分だった。そんなとき、父の書斎で見つけたのが『True Heart2』だった。
 それから程なくして、両親はどこかへと消え失せる。泣きじゃくる妹と、お金のたんまりと入った通帳を残して。
 正直にいって、俺は両親がいなくなって清々した。母が毎朝ドアの前で泣いていると、殺してやりたくなるほど死にたくなっていた。父にも、良心の呵責を感じていた。
 俺は背負った十字架を投げ捨てて、茨の冠も脱ぎ捨てながら、ゴルゴダの丘を全速力で駆け上がる心持ちだった。有頂天だった。
 カーテンの閉めきった薄暗い部屋で、画面の中のまや姉と戯れる。これが、俺の世界だ。苦しみなんて何一つなく、幸福な世界。それが画面の向こうにある。幸せ、だった。
 だけど、いつだったかヘッドホンをとってトイレに行こうとしたときだ。なにやら外が騒がしい。カーテンの隙間から、ガラス戸越しに我が家に面した道路へと視線を下げる。見ると、同年代らしき少年少女が楽しそうにじゃれあってる。それはそれは楽しそうに。
 なんて下品なんだろう、人の幸福は「ゴキブリ」よりも醜いに違いない、そう思った。
 ふと、我に返る。俺はこんなほこりのかぶった部屋の中で、いったい何をしているのだろう? 一人っきりで居丈高になって、何に対して虚勢を張っているのだろう? このまま俺は、どのように生きて、どのように死んでゆくのだろう。
 急いでカーテンを閉めて、光を遮る。そしてディスプレイの前に駆け戻って、ヘッドホンをつける。俺には、この世界で充分なんだ。画面の向こう側の、この世界以外、何もいらない。
 画面が一瞬、暗転する。暗がりに映し出されるのは、生気のない腐った目をした「ゴキブリ」だった。
 生まれてこなければよかった。
 嗚咽が漏れる。どうして? どうしてこんな苦しい思いをしなければならないんだ? 俺が生まれてこなければ、両親だって頭を抱えずに済んだに違いない。担任だって、クラスのみんなだって、俺さえいなければ学園生活をもっと楽しめたはずだ。
 全て俺のせいなんだ。


 では、どうすればいい? どうすればよかった?
 答えは簡単だ。
 生まれてきたのが間違いだった。


 テストの問題がこんなに簡単だったらよかったのに。そうすれば、多少なりとも俺の頭もよくなってたはずだ。でも生きてるかぎり、俺はこの問題を間違い続けるのだろう。
 だから死にたかった。けれども死ねなかった。死にたかったけど、死ぬのは怖かったからだ。
 この世で一番つらいことは何かと問われれば、それは生きていることと答えよう。
 暗闇の中、何をするのも面倒になっていた。トイレで用を足すのも煩わしかったので漏らしてみた。ぜんぜん気持よくなかった。吐き気が止まらなかった。俺はこの現実から逃れるために、そのまま『True Heart2』の世界へと逃げ出した。


第二十六話:クソッタレ
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